手を離さないこと

岡崎医療センターでは1年間総合診療科外来を担当していました。来る患者さんは健診異常から大きな病院で診断がつかなかった症状まで多種多様。色々な訴えを経験することができました。

1年間の外来を通して自分が重要だと気付いたことは、「めんどくさいと思っても診断がわからなくても手を離さない」ことです。

診察の前に気が滅入ることもありますが、診察の終わりにはできるだけ「また一ヶ月後に来てお話を聞かせてもらえませんか?」と言って自身の外来に来てもらうようにしていました。これはなんというか、覚悟がいります。でも、そうすると、繰り返される外来の中で新しい症状の出現や症状の規則性がわかって診断の手がかりになったり、本人の心の中で症状と折り合いをつけるプロセスを目の当たりにすることがあったりと、継続性の重要性を感じる出来事が何度もありました。

未分化な健康問題を抱える患者にとって、症状に共感している仲間と定期的に継続して関わることが癒しにつながると、指導医の授業の授業で教わりましたが、まさにその通りだと思いました。

そういえば初期研修医のとき、金髪でライオンみたいな髪型の強面の患者さんがいたのですが、毎月恐る恐る診療していました。(初回の診察で「待たせすぎや・・・!」と凄まれてヒエッてなりました。) 何回か外来でお会いした後、研修中に院外研修の期間があり、2ヶ月間別の医師に診察してもらうことになったのですが、それを告げると「なんや、寂しくなるなぁ・・・」と。意外な発言にびっくりしました。

当時の自分は、この現象が生じた理由を「病棟で会う7日間と、月に1回外来で会う計7日間では、出来上がる関係性が違うのでは?」と考察しました。その後、國松先生の「また来たくなる外来」を読んだときに、周期的に外来に来てもらうことにより、患者さんの中に軸が出来上がって、それが良い、みたいな話が書いてあって(多分)、これだよ!これこれ!と思った記憶があります。

つまり何が言いたかったかというと、問題を共有している仲間と定期的に会うことにより、医師-患者を超えた、いや、超えたは言い過ぎかもしれませんが、いわゆる医師-患者関係という名前でない関係が出来上がり、そこに癒しの力があるのではないかなと考えた、ということです。